①霞漂う杜
神の気韻の如き霞漂う杜
夜の闇から朝の光の間のかわたれどき
かすかにみえる新しき社殿
ただ、深緑の薫りと新材の香り漂う
②常若の社
永遠に若くあり続ける「常若(とこわか)」の世界を顕現する地
古びることなく、朽ちることなく、常に新たに、そして変わらずに。循環によって永続するいのちの状態
社殿の静けさは、訪れる者の心を澄まし
杜のささやきとともに、神々の気配がそっと息づく
③青紅葉萌える
澄みわたる空の下、一本の大楓が静かに立つ
その枝は風にたわみながら、まるで空と語らうように伸び広がる
芽吹いた若葉は、光を受けてきらめき、幾重もの命の記憶をたたえて揺れる
根は地に、葉は天に
その姿は、地上に生きるものと天上をつなぐ祈りのかたち
④白糸の滝 緑の渦がうねる季節
青葉が芽吹き、緑の渦がうねる森の奥
黒い岩肌を縫うように流れ落ちる白き瀧
山の心が吐息するかのように、静かで、そして力強い
山の生命の鼓動を感じさせる季節
⑤緑萌える可也山
可也山はふもとの人々の暮らしを見守る神奈備(かんなび)
青空のもと、静かな水面に緑萌える山が映る
寄り添うように佇む小さな家々、風に揺れる青麦、水路を走る陽のきらめき
自然と暮らしの間にある、穏やかで確かな「いま」を描く
⑥緑萌える引津亭
引津亭(ひきつのとまり)は大陸に渡る人々が日本と別れを告げ、大陸へ向かっていった地
静寂の春の海に、山と森が深く深く映りこむ
春の光に染まった山肌は、やわらかな絹のように揺れ、空と水が溶けあう境界に、風さえも声をひそめる
自然が紡ぐ「祈り」に近い静けさ
⑦碧色の海に映える夫婦岩
白き鳥居は、此岸と彼岸の間の結界
イザナギとイザナミの依り代とされる夫婦岩
ふたつにしてひとつの魂
紺碧の海に映える様は、祈るものの心をあらわす
⑧羽島映える糸島の海
鏡のような春の海に、可也山と羽島がくっきりと映る
その静けさは時間さえも止まったかのよう
風も音もない世界で、ただ水と空と大地が対話する
対岸にあるのは遠くの風景ではなく、自らの内面の静寂
⑨緑萌える芥屋の大門
碧き水面にそびえ立つ芥屋の大門
周りの岩山に緑萌えたち、春を感じさせる
ぽっかりと開いた海門は、神の世界への入口
一歩踏み込めば、自らの深奥に触れる旅のはじまり