同一の構図に可也山をとらえ、朝から夜へ、晴から雨へと移ろう光を重ねた八景。それは単なる自然の描写ではなく、「光に宿る象徴性」を探る試みである。
川の流れは脊振山系からの水を集め、田畑を潤しながら加布里湾へ注ぐ。近世、先人たちの干拓によって拓かれたこの地は、今も人々の暮らしを支える場となっている。可也山の姿は、その循環を見守るかのように四季折々の光を受け止め、地域の心象風景として今日まで親しまれてきた。
本連作は、川の循環に自然の恵みを、山のうねりに大地の記憶を、天空の色に人々の感情や祈りを重ね合わせたものである。観る者は「可也山」という象徴を通じて、自然と暮らし、故郷と記憶が交差する場へと導かれるだろう。
販売・発送元:大川 博